葬儀で最も大事な二大書類・・・それは医師から渡される渡される“死亡診断書”と火葬場で提出する“火葬許可証”です。
どんなに威張っている葬儀屋も、火葬許可証を忘れたらただのオッサン。なんてったって、それがないと火葬が出来ません。
ご家族が来てお坊さんも来て、お柩も火葬場に着いているのに火葬が出来ない・・想像しただけで身の毛がよだちます。たまに
「○○葬儀社が許可証(=火葬許可証のこと)忘れたんだって」
と聞くと噂は瞬く間に広がります。おそろしやおそろしやぁ。。
今回はその火葬のお話。
 
葬儀の後は火葬場へ移動して荼毘(だび)が執り行われます。その際、火葬場に提出する書類=それが火葬許可証です。
私たち業者は火葬のお世話をするために火葬場まで同行して、書類の提出や控え室への案内、料金の支払いや必要に応じて骨壺の用意などをします。
火葬炉の前で短いお別れを済ませた後、お柩は重々しい扉の向こうに吸い込まれていきます。いかにも“焼くぞ~”という小部屋に一気に入れられて(たまに炎も見えたりする)、人間は灰になっていきます。荘厳で崇高な瞬間です。
 
時間にして約1時間10~20分くらい。
都内の東京博善運営の火葬場はもっと早く、50分くらいでお骨上げになります。控え室へ移動して、お茶してちょっと一服して、お手洗い行ったらもうお骨上げです。本当に早い。概して体格の大きい人は時間がかかり、男性より女性の方が火葬が短めです。
骨の量は見かけによりません。華奢な方の骨が太いこともあります。あとやはり闘病が長かったり薬の投与が多い方の骨は崩れやすくなっています。
 
たまに骨に薄いピンクや緑の色が付着する場合がありますが、これはお別れで使ったお花の色素が付くのだと言われています。膝や肘などに金属部品が入っている方は、お骨になった際丸々残って出てきます。一応喪主様に確認して、処分でよろしければ火葬場で処分されます。
 
ペースメーカーをお使いの方は、事前に葬儀社から火葬場へ伝えられます。ペースメーカーは火葬の際、破裂する恐れがあるのです。それにより炉士が怪我をしたり、火葬炉を傷つける・骨を破壊するなどの事象が起こります。ただ私の体験上、ペースメーカーによるトラブルはただの一度もない(&聞いたことすら無い)ので、機械の材質が変えられたり、もし破裂しても問題無いくらいのものになっているのかもしれません。
 
火葬炉の冷却が終わると収骨(=お骨上げ・骨を拾うこと)となります。ご家族やご親族は収骨室に移動して、故人のお骨を拾います。先に出した“火葬許可証”に、火葬場が判をついてそれがそのまま“埋葬許可証”になります。埋葬の際に必要な書類なので、職員さんは骨壺の箱の中に入れてくれます。
 
収骨の際、100人に一人くらいいらっしゃるのが、
「のど仏は出たかしら?」
「のど仏はどこ?」
と、やたらにのど仏を気にする“のど仏おばさん”です(私の印象としては圧倒的に年配の女性が多い)。
気にするのは構わないのですが、前にいる人を押しのけてのど仏を探そうとしてとてもパワフル(泣)。
のど仏とは首の二番目の骨のことですが、壊れなければちょうど小さな仏像が手を合わせているような格好で出てきます。その上の骨がお袈裟みたいな形をしており、両方とも出るとお坊さんがお袈裟を掛けているようになります。
 
長年やっている私も双方が壊れずに出てきたのを見たのは数えるくらいしかなく、極めてレアケース。のど仏自体大変に壊れやすいのです。もし綺麗に出てきたらご利益があるかもしれませんので、手を合わせた方がよいかもしれません。合掌=
誰も書かなかった葬儀のお話・・『火葬ラプソディ』