「亡くなりました」
と連絡を受け、病院等にお迎えに行くのが、葬儀屋の仕事の第一歩です。
病院には正面玄関のほかに、“夜間出入口”といって夕方以降の夜間や休日に出入りする所があります。
 
そこには防災センターがあって、守衛のおじさん(女性はまずいません)が待機、出入りする人をチェックしています。ノートに名前や行き先をを書かせたり、バッチを渡されたり、病院によっては業者に白衣を着させたりします。
守衛さんといっても人それぞれで、きっちり業務しかしない方もいらっしゃれば、ものすごく人間的に接して下さる方もいます。(私たちはそれを最初の言葉のやり取りで瞬間的に汲み取ります)
 
例えば夜中に初めての病院にお迎えに行ったりすると、非常に不安です。正面玄関はまず締まっているので、夜間出入り口を探していると、守衛のおじさんが
「こっちこっち」
なんて手招きしてくれたりすると、ホッとします(我々も一応人間なのです)
 
到着すると守衛さんはナースセンターに連絡を取ってくれ、
「ちょっと待ってねー」とか
「夜中なのに大変だねー」
とか言ってくれます。私は
「いやいや、守衛さんこそ大変ですよ」
とか言います。他愛ないやりとりですが、結構重要です。仕事はいつでも気持ちよくしていただかないといけないのです。
 
「では上がって下さい」
と言われると、ストレッチャー(移動式担架)をカラカラ引っ張りながら病棟へ上がります。
故人様をお預かりして一階に降りてくると、おじさんは扉を全開にしてくれていたり、障害物をどけてくれたりして、スムーズな出発を手伝ってくれたりします。これがありがたい。
医師や看護師さんのお見送りに出てくださるケースが多いのですが、守衛さんもお見送りにいてくれたりすると
「ああ、そういう病院なんだな」
とこちらは思います。病院を出発して、ご自宅や安置場所へ向かうのです。
 
死亡退院/死亡退所は、私たちや病院施設スタッフは数えきれないくらい経験しますが、一般の方が遭遇するのは人生で数回くらいでしょう。
ある老人ホームなどは、スタッフさんが全員出てきてお見送りしてくれます。ずらーっと並んだスタッフさんの前を通って、車まで行くのですが、それはそれでちょっと恥ずかしいです(私は、ですが)。施設の“心意気”を感じる瞬間です。
 
生だけでなく死にも、いろんな方が関わっているのです。
*友引毎に更新
誰も書かなかった葬儀のお話・・『守衛のおじさん物語』編