『ラバーソウル』・・ザ・ビートルズの6枚目のアルバムです。実は『ヘルプ!』と同じ1965年の暮れに出されています。(1966年のイメージが強いのですが)

私はデジタルリマスターが出た時に、真っ先に“モノボックス”を買いました。これは買う価値があると思ったのです。ステレオは左右のスピーカーから異なるラインの音を出して臨場感だったり変わったエフェクトを描き出しますが、モノ版は左右から同じ音が出ます。これでこの『ラバーソウル』を聴くと、これがまた良いんです。なんと言うか・・吸い込まれていくような感覚になります。

出だしはもちろん「ドライブ・マイ・カー」(ラバーソウルの顔曲ですね)。続いて「ノルウェイの森」・・これで完璧にラバーソウル・ワールドになります。「ユー・ウォント・シー・ミー」のあとに「ひとりぼっちのあいつ」・・名曲ですね。歳を追うごとに沁みます。(これを書いたジョンは当時25歳くらいですが・・)何曲かあって「ミッシェル」が出ます。もうやばい。ポールの爆発を予感させる曲です。リンゴののんびりボーカル曲のあとに問題作「ガール」。このジョンのボーカル、切ない。「君はいずこに」のあとは「イン・マイ・ライフ」・・・ジョンレノン屈指の名曲です。ジョージも徐々に曲を作っているのですが、このアルバムの作家ジョンは依然として高いステージにいます。しかもそのステージは「アイ・アム・ザ・ウォラス」を作るジョンほどの高さでなく手に届きそうな・・何やら人間臭いジョンなのです。「女と寝ちゃった」とか、「あの子を忘れられない」とか、「懐かしい風景がある」とかを切ないメロディでサラサラっと書いちゃう。叙情性があるというんですかね。作品にとても“幅”があります。このアルバムでジョンは内面を一番出しているんじゃないでしょうか?この時期、ビートルズは多忙を極めていたはずですが、それでこんなクオリテイの高いアルバムを作ってしまう・・・脱帽です。

「ひとりぼっちのぱいつ」をモノ版で聴いて、本当に吸い込まれそうになりました。ステレオ版は遠くでジョンが歌っている感じなのですが、モノ版はすぐそこで歌ってる、どころか、すぐそこにいる感じなのです。同じ空間で同じ空気をビートルズと共有してる感覚です。

プロデューサーのジョージ・マーティンは「モノラルの“サージェントペパー”を聴かなければ、あなたは本当に“サージェントペパー”を聴いたことにならない」と言っています。それだけモノラルを重視していたのでしょう。1960年代、時代はモノラルからステレオへの移行期でした。ビートルズはモノラルに間に合ったのです。

秋の夜長にラバーソウル・・・なかなかいいですよ。(ビートルズのモノ版はたぶんレンタル屋さんには置いてないと思います。私の物も門外不出です。あしからず)

秋の夜長にラバーソウル