最近やれ隣人トラブルだの、女性を刺して自分も自殺しただの、近い人間間トラブルを多く聴きます。冷めた言い方ですが、私は人間同士ってそれほど分かり合えないと思っています。分からせる“言い方”や理解してもらいやすい“行動”があるだけじゃないかと。分かってもらえないのはこっちの責任、くらいの腹でないと分かり合えるなんでほど遠い。「向こうが悪い/こちらは正しい」「なんでわからないんだ」とかね。「わかってもらえるはずだ」なんて、勝手な思い込み。分からないなら分からないなりの理由があるはず。意味が伝わってなかったとか、言葉を取り違えていたとか・・単純に“嫌い”ということもあるでしょう。分かり合うのにまず必要なのは相手の立場や気持ちを理解すること、それなんじゃないかと思います。

いま『男はつらいよ』シリーズを観ています。以前観た回も見直しています。初期の頃、シリーズに人気が出て誉められたり悪口を言われたり・・ファンの反応に気を揉んでいた寅さん役の渥美清に、先輩の森繁久彌はこうアドバイスしたそうです

「清よ、いいことも聞くな。悪いことも聞くな」

自分の信じる芝居だけをやれ、ということでしょうか。含蓄のある言葉です。渥美さんは亡くなってしまいましたが、寅さんとしてまた役者として私たちの中で生き続けています。渥美さんも信念を持って寅さんを演じ続けました。彼にとって“寅さん”は毎回毎回「よっこらしょっ」と上る高い舞台だったそうです。普通の気持ちじゃ臨めない高いものだったと。

いま日本にはこの『信念』が欠けているのではないでしょうか?

信念