熊本地震では、国内で唯一稼働している九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)で、震度2を観測しました。原発に異常はなく、運転も続けられました。 今回の地震は震源が浅く、内陸活断層による直下型地震との見方が強いです。川内原発が震源地から100キロ以上離れていることが幸いしたといえます。 東京電力福島第1原発事故をもたらした東日本大震災から5年余。震度7を観測した熊本地震は、日本が有数の地震国であることを示し、地震の被害の大きさも突きつけました。 政府は、原子力規制委員会が新規制基準に適合したと判断した原発の再稼働を進めています。   稼働中の原発周辺で同規模の地震が発生し、安全装置が想定通りに働かなければ、周辺住民だけでなく、国土と後世に深刻な影響を与える可能性があります。日本は原発のリスクをどこまで容認できるのか。今回の地震を契機に、改めて考えなければなりません。 社会が容認できる原発のリスクについて、司法の判断は分かれています。 福岡高裁宮崎支部は6日、川内原発の周辺住民らが再稼働差し止めの仮処分を求めた即時抗告を棄却しました。その際には「可能性が限りなくゼロに近くならない限り、(大規模な自然災害の発生を)想定するべきであるとの社会通念が確立しているとはいえない」との判断を示しました。 川内原発については、想定以上の地震が起きるリスクはゼロではないと指摘したものの、同原発が適合した新基準は安全性確保の面で合理性があるとしたのです。 これと正反対の判断を示したのが、3月の大津地裁の決定です。 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止める仮処分を決定した際、新規制基準に対して想定を超える災害に対応できる「十二分の余裕」を要求。対策の見落としで過酷事故が生じても「致命的な状態に陥らない思想で基準を策定するべきだ」と判断しています。 二つの異なる決定が出た背景には、原発のリスクに対する国民の議論が不足していることがあります。私たちは原発にゼロリスクを求めるのか、ある程度は容認するのか。容認するなら、どの程度なのか。国民的な合意を見いだし、政策に反映させる必要があるのです。 次に大規模な災害が発生してからでは遅い。各政党は夏の参院選で明確な争点にして、国民の判断を仰ぐときです。
地震と原発・・熊本地震から考える