最近は葬儀も様変わりしてきて、ある意味“派手”な演出が出てきています。人間の感覚は時代に応じてある程度変わるものでしょうから、それ自体を否定する気はありません(というか私もそういう演出をしたい!)。ただ身内を亡くしている私としては、どちらかというと身内の葬儀の際は(そっとしていて欲しい)派でした。
あの派手な演出も誰彼構わずやっているとは思いませんが、受け取る気持ちがあって初めてその演出が通じる訳で、一方的な思いだけではきっと葬儀社側(演出する側)のそれこそ“片想い”となってしまいます。
 
“片想い”にならないためには、ご家族の話を伺う事が絶対的に重要となります。何気ない言葉の中にもヒントが散りばめられています。「誰々の歌が好きだった」とか、「◯◯に行った時こんなことがあった」とか、「口ぐせが△△だった」とか・・それをきちんと受け取り、正確に分析し、効果的に実行(=演出)する必要があります。お客様の故人への温度感や思いの深さは、実際に話を伺った人間が一番分かるので、話を伺った人間が現場にも携わる事が理想です。
 
先日、ある場所への深い造詣がある方の葬儀がありました。私は朝一番でその場所へ行き、そこの名前が記された土産品を何点か買って、思い出コーナーにお飾りしました。コーナーにはほかにも故人を偲ぶ写真や故人が生前制作した資料などを並べました。奥様からはとても感謝されました。それだけで朝一番で出かけた甲斐があったというものです。
 
すべてが成功するかは分かりませんが、ご家族の意向をきちんと汲み取り誠意を持って対応した事であれば、大抵受け取ってもらえます。葬儀に限らず、普通にやっていてはどこまでいっても普通です。普通で良い、と思うご葬家がいらっしゃる一方で、「何かしてあげたい」と思われるご家族もいらっしゃいます。そこを汲み取る/感じ取るのも、葬儀屋の大事な仕事になっています。
*友引毎に更新
誰も書かなかった葬儀のお話・・『葬儀の演出』編