この一週間でイギリス映画
『おみおくりの作法』
を三回観ました。毎回何かしらの気づきがあるし、毎回ラストで泣いています。(おっさんはとかく涙脆くて・・)
 
主人公は葬儀屋ではないのですが(ロンドン市ケニントン地区の民生係)、やることはほぼ葬儀屋。身寄りのない方の死去に伴い、身内や知り合いを探したり遺品をまとめたり、彼一人で葬儀にも参列します。ものすごく丁寧に事を進めるので、私にここまでできるかというと・・(反省!!)
ただこの丁寧さが上司には気に入られず、ある日人員整理で解雇を言い渡され・・というお話。
 
この映画のラストにある葬儀風景が映ります。主人公ジョンが関わったおかげで絶対に交わらなかった人々が、その葬儀に参列するのです。それを見て
「葬儀って人と人を結びつけるんだ」
と思いました。
 
家族、親族、友人、古い知り合いやかつての恋人・・
別にそこで何がある訳じゃない。でもその故人は彼らの人生のあるページを、一瞬にせよ長い時間にせよ駆け抜けたのです。その期間をある者は共に笑い、またある者は泣いて過ごしたかもしれない。恨みを買うこともあれば、故人に感謝する者もいます。でもみんな葬儀には駆けつけるくらい、多かれ少なかれそれなりに交わったのでしょう。人間はいろんな〝面〟を持っているのです。
 
私は葬儀に際し、故人に対して般若心経をあげ、火葬炉の前では(ご家族に確認してから)焼香をさせていただくようにしています。それが葬儀担当として出来る、せめてもの行いと思っています。ジョンには遠く及びませんが、この二つは必ずやっていこう、と強く思いました。
 
私と故人だってまったくの他人です。たまたま葬儀屋と故人として関わっただけです。でも、それがご縁なのです。出会うのも縁だし別れるのも縁です。
縁だけは人間の力ではどうにもなりません。今いただいている縁に感謝するほかないのです。
 
「葬儀は人を結びつける」
これは私の新しい葬儀のテーマになる気がします。
そしてそれを気づかせてくれた『おみおくりの作法』は本当に良い映画です。見た人は1時間30分後、まったく違う目線で世の中を見られると思います。原題名『Still Life』(そこにあった人生、とでも訳すのでしょうか?)もとてもいい。素敵な映画でした。
誰も書かなかった葬儀のお話 『葬儀の役割』・・編